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行間の物語 松山商業陸上部の男気

 ←52年目の高校駅伝 →負託に応える
今夜は実名で、当時の男たちを書いていこう。

エピソード1  大西久則先輩
入学してまだ間もない頃、陸上部の練習におずおずと参加した。

長距離班の主将は「今日は横河原に行く」と告げて走り出す。
松山商業から10kmの地点が先輩方により登録されていて、山道、平坦な道、まっすぐな道、登りと急な下り坂とメニュウがいろいろだった。

中でも横河原は起点である学校から12.5kmのところである。昨日今日高校生になったばかりの新入生が走れる距離ではない。
往復25kmだ。

無題


走り出したが、やがて5kmをすぎるとズルズルと集団から遅れてゆく、横河原橋で折り返した先輩方が復路を帰ってゆくのとすれ違い、なんだか心細くなってきた・・・それでも20kmはなんとか走った。
松山市に久米という町があり、学校までおよそ5km 、とうとう走れなくなった。
春とはいえ、日暮れてくると寒い、おまけに雨まで降ってくる。
濡れながら歩く、時速4mが早めの歩行だから、1時間は歩く勘定になる。
エネルギーを使い果たした情けない陸上部員はトボトボと歩いて帰る。
途中で同じ御幸中学のIくんとも一緒になった、かれも歩いていた。

やっと帰り着き、校門をすぎると、体育館の影からヌッと影が現れた。
2年生の大西さんだ
「お前らが最後か、ようやったな、さあ帰ろう」と言ってくれた
大西さんは着替えもせず新入生の最後の到着を1時間も待っていてくれたのだ。

嬉しかった。

大西氏は後 愛媛の記録を次々と更新した長距離、中距離の覇者として名を知られる人だ。



エピソード2   主将 土佐逸郎氏
土佐さんはマラソンで有名になった土佐礼子さんの父上です。
入部してはじめての競技会が堀之内の陸上競技場で行われた。
私は5000mにエントリーされていて、17~18分位で走っただろうか、もちろんドゲです。
それはもうヘトヘト(笑)
午後から一万メートルがあり、そんな種目はエントリーが少ない。
松山商業には定時制があり、働きながら夜間勉強する人たちがいた、陸上もクラブがあった。
その定時制にSさんという4年生がいていいランナーだった。
その人が一万メートルに出るのだが、2~3人しか出ないということだった。

顧問の玉井先生が「Sくんが出る誰か相手をしないか」と言った。
すぐさま、土佐主将は「はい出ます」と答えた。

自分も散々走って優勝し疲れているだろうに、まだトラックで25週も走るのか!私はその男気にしびれた。
2~3人が陸上競技場を30分ほど走る。競技場のみんなが見ている。ええかげんな走りはできない、優勝を狙うに決まっている。

(トラックは1周400m、一万メートルは25周です)

これが、松山商業陸上部主将のプライドだと思った。

強い男は優しさと思いやりと決断を身にまとっている。それは高貴なプライドと呼べるものだろう、と少年の私は強く思った。


駅伝は、7人のタスキ渡しでつながっている。責任を果たして次に渡す。
各人のベストを尽くした結果で、誰一人まあまあなどというものはいない。
駅伝選手としての自覚は大抵ではない。
わたしも、自分なりに選手としてあるためには努力をした。
6時に起きて、5kmほど走り、それから登校する、午後からは正規の練習がある大体20km走る、帰宅して食事を済ませると松山商業の定時制のライトが校庭に灯る、わたしの部屋からそれを見て、学校に出かける、何をするかだって?定時制の陸上部と一緒に練習するためだ。
それでも、一流の人には絶対なれないと感じていた。

高校の3年間一日も休まないで走った。


結果平凡なランナーで終わったが、
いい思い出だ。
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